顎変形症

JAW DEFORMITY

顎変形症とは

日本形成外科学会では「上あご(上顎骨)や下あご(下顎骨)の形や大きさの異常、両者のアンバランスによって咬み合わせの異常(咬合不正)と顔の変形などの症状を示すもの」と紹介されています。あごの前後バランスや左右への傾きやねじれなど、顎変形症といっても個人により症状は様々ですが、原因には諸々の説があるものの不明です。一般的には思春期に、出っ歯や受け口などで歯並び(歯列)が気になり、矯正歯科を受診されるケースが多い現状です。また顔の歪みや、笑うと歯茎が見えすぎることなどを気にして美容外科を受診されるケースもあります。当院では上記のような一般的な顎変形症のほか、先天的な顔面体表異常(唇顎口蓋裂や各種症候群を含む)による顎変形症にも数多く対応しています。

顎変形症の問題点

  1. 食事に制限がある
    咬み合わせが悪いと固いものが砕きにくく食べにくくなるため、軟らかいものばかりに食事が偏ってしまいます。生きるうえでの食事が存分に楽しめなくなります。
  2. 咬み合わせが悪いと若いうちから総入れ歯に
    歯は上下が咬み合うことで位置を維持しています。上下のあごのバランスが悪く、咬み合う対応する歯がないと、その歯は抜けてしまう恐れがあります。1本抜けると周囲の歯が動き、より咬み合わせのバランスが悪くなり、さらに抜けるといった悪循環に陥ります。

  3. あごの形態やバランスで顔の印象がずいぶん異なります。自分の顔がイヤで人に会いたくない、歯や歯茎を見られるのがイヤで人前で笑えないなど悩みはつきません。原因は顎変形症にあるかもしれません。
  4. 小顎症による睡眠時無呼吸症候群
    下あごが小さい人では気道(首の空気の通り道)が狭くなり、寝ている時には大きないびきをかく傾向にあります。寝ている間の良好な呼吸状態が保てず、日中に強い眠気が出現し、突然死につながる恐れがあります。

顎変形症の治療方針

咬み合わせを治すことが大前提ですので、矯正歯科医と密な連携をとって治療方針を決定します。治療には歯ならび矯正(矯正装置での治療)のみで完結する場合と、あごの骨ごとを動かす必要がある(矯正装置+手術)場合があり、後者の場合に当院では形成外科が関与することになります。レントゲンやCTといった画像検査結果をもとに、歯の動かし方・あごの骨の移動方向や移動可能量など、連携している矯正歯科医との情報共有をおこない手術方針が決定されます。このとき、あごの骨を動かす手術では少なからず手術後の顔の変化がでるので、患者自身の顔貌変化への希望も参考にします。手術前の歯並び矯正治療に1~1.5年以上を要すことも少なくなく、また術後も歯並びの微調整や、新しいあごの位置での咬み合わせの習得のため数か月間は矯正治療が継続されます。

手術について

当院形成外科ではあごの骨を切り動かす手術を行います。多くの場合は口の中からあごの骨を切る操作をおこなうため、術後に顔体表に傷が残る心配がありません。上顎骨の切り方には「ルフォー骨切り」と呼ばれる切り方や「分節骨切り」と呼ばれる方法を組み合わせて骨切り術おこない、症例にあわせ、体内に吸収分解されるプレートやチタン製のプレートを選択使用し、計画通りに移動させた位置で固定します。また下顎骨に関しては「下顎枝矢状分割骨切り(SSRO)」と呼ばれる方法が一般的ですが、症例によっては「下顎枝垂直骨切り(IVRO)」と呼ばれる方法を用いることもあります。先天体表異常などで骨の量が不足している場合には延長器を装着し、骨を伸ばす手術をおこなう場合があります。

顎変形症の診療実績

2017年度 42件(うち唇顎口蓋裂8件、第1第2鰓弓症候群3件)
2018年度 45件(うち唇顎口蓋裂8件、第1第2鰓弓症候群1件、顔面半側肥大症1件)
2019年度 59件(うち唇顎口蓋裂5件、第1第2鰓弓症候群1件、トリーチャ-・コリンズ症候群1件)
2020年度 69件(うち唇顎口蓋裂18件、第1第2鰓弓症候群2件)
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